コメカミの和画煎字記

コメカミが観た日本映画を1000字前後で感想をまとめています。

「魔女の宅急便」

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映画『魔女の宅急便』予告編 - YouTube

尾野真千子のオソノさんを中心にジブリ版を忠実に再現したキャスティングを観て、わりと本気で挑んでいる思って観ていたが、どうやらまだ実写化には早かったようだ。ダメな部分は多々あるが、特に目立つのは“東洋の街”と称されたロケーションだろう。風車があって横文字の街が並ぶのに、学校や動物園のシーンとなると「100%日本」な場所が出てきて、メルヘン感が薄れて萎える。最初に出てくる“東洋の街”というのも忠実に再現できませんでしたと言い訳をしているようにも見える。逆にメルヘン感が濃すぎて萎えたのはジジとマルコのCGなのだが、これも物語上活躍すれば許されるが、ジジもジブリ版のような人形として活躍するシーンや、喋らなくなる展開などが一切なくただの傍観者にすぎず存在意義はほぼない、マルコも別に本物のカバでも良かったシーンがほとんどである。子ども向け演劇のようなセリフっぽい演出(特に動物園の人たち)もイライラするし、キキの母(宮沢りえ)が発する“わらいがお”というワードも妙に鼻について仕方がない。レコード会社が大きいスポンサーなのかと思えるくらい、声を失った歌手のエピソードを重要なキーにしているが、正直物語上どうでもいいエピソードであり、どしゃぶりの中で歌いだしたときはさすがに笑ってしまった。またその歌も全然作品の雰囲気にあっていない。ジブリ版にはない、中盤のキキが呪いを運んでいるとデマを流されて、森の中で遭難して一人でもがき苦しんで、そんな中トンボに自転車を教えてもらうエピソードまではヒロインの素朴な存在感と演技が良く持ち返していたのに、動物園のカバのエピソード以降がそれを帳消しにしてしまった。マイナス印象からオソノがキキを受け入れるのも呑み込みづらいし、フクオもセリフがあったかと思いきや急に原始人のように「フン」しか言わなくなるのも不自然、彼こそ真の傍観者であるべき(ピエール瀧とか土田晃之のほうがコメディ要素は強まったと思う)。洗濯物を結んで飛ばしたり、雷雨のなかカバを運ぶシーンそして上空からみた映像など飛んでいるときの映像は素晴らしく、むしろ3D上映にしたほうがよかったのではないかと思わせる。ヒロイン・キキを演じた小芝風花は純粋・素朴な感じが全面に出ており、オスカーのオーディションで選ばれるシンデレラ・ガールであることは伝わってきた。彼女のアイドル映画だと思えば高得点だがさすがに不本意だろう。