コメカミの和画煎字記

コメカミが観た日本映画を1000字前後で感想をまとめています。

「白ゆき姫殺人事件」

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『白ゆき姫殺人事件』予告編 - YouTube

舗装した道路と思ったら大きい穴があり前に進めなかった、という感じか。前半、空想で作られた城野美姫がとる奇怪な行動と、報道するテレビ番組が繰り返されたのち、番組を見ながら涙を流す本物の美姫が出てきた瞬間とその表情が鳥肌が立つほど恐ろしい。『八日目の蝉』につづく、女優・井上真央の本領が発揮された部分だ。デマを流した人物や、偏向な報道を番組関係者などにも鉄槌が喰らうのは爽快だし、過去の邦画のような執拗な「ネット=害悪」的な要素は抑えつつ、その危険性を伝えるのが作品の役割ならば及第点。本来マイナスイメージになりかねないツイッターが協賛で名を連ねたことにも感心。終盤の夜のシーンも、真っ暗で巨大なスクリーンで観るに最適な演出が施され親指が立った。しかし、ネットの露悪的な部分がしっかり演出されているのに、赤星によるインタビューの部分が酷い。城野の関係者たちに取材をしているが、ある人物だけインタビューを受けないまま終わる。推測であるが、最終的にその人物は殺害された典子を恨むと同時に城野の味方でもある。そんな彼女の証言シーンがあると、話が成立しなくなるから取材シーン丸ごと削ったという作り手の都合が見えてしまい、このせいで作品の評価がガタ落ちしてしまった。実は赤星はその人物に取材していたが、美姫をかばうことしか言わなかったので、不要と思い消してしまった。というシーンをひとつ加えておけばよかった。城野と恋人関係だった篠山が、彼女が祀り上げられる前の段階で険悪な態度を取るのも不可解。証言を編集した映像が番組で使われるが、証言の段階で証言者らの空想を入れているだけでなく、証言シーンと違うものが番組で使われているせいで編集した感が伝わってこない。ツイッターに対する知識不足も目立つ。冒頭で赤星がいちいち感情を書くところで首をかしげてしまったし、根本的な問題で画面に出てくるツイートに声を入れてしまっていることが大きなマイナス。とどめを刺してしまえば、新幹線とコインパーキングの出入りした時間を考えればアリバイ成立してしまうのではないだろうか。赤星が晒し者になる情報はどのように広まったか。立場がなくなってしまったディレクターの怨恨で拡散したシーンを加えてもいいし、城野の友人・夕子が名刺を公開しようとするが、思い留まるというようなシーンをくわえても良かった。褒めたい部分はあるが、残念ながら穴が大きすぎた。