コメカミの和画煎字記

コメカミが観た日本映画を1000字前後で感想をまとめています。

「ヌイグルマーZ」

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映画『ヌイグルマーZ』予告編 - YouTube

監督・井口昇、主演・中川翔子ということで、一体どのようなカオスな内容なのだろうと鑑賞したが、開始30分ぐらいで「おやおや?」となり、終わったころには首を傾げていた。一言で言うならば、監督と中川翔子、各々の個性であり特殊な部分が相殺し合ってしまっているような映画だ。序盤3分の1くらいは監督の過去作のような、ド派手なアクションと、どうしようもなくくだらないギャグの応酬が繰り広げられたいたのだが、中盤から普通の特撮作品のような熱いセリフや普通の戦闘シーンが繰り広げられるだけで、井口昇らしい要素が削がれてしまっている。「電人ザボーガー」のときも感じたことではるが、まじめなシーンが長く続くほど井口監督の作品は退屈度が増していってしまう。主演の中川翔子も普段見せるようなトリッキーな姿はそこになく、確かに変わり者だが中川翔子である意義がそこにはない。ジャッキー・チェンフリークである彼女に何故アクションシーンをやらせなかったのかも疑問。女優・中川翔子を見せたかったのならそれはそれでいいのだが、ただそれは井口昇監督の役目ではない気もする。必要なさそうなシーンをゆっくりと流し、あえて重要なシーンをパパッと切り上げる。沖田修一作品のように上手くいけば成功するパターンもあるが、今回はまさにその逆。やっとアクセルがかかり、猛スピードで動き出したかと思いきや、急ブレーキを踏まれているような、物語進行で、イライラしてしまう。武田梨奈のアクションも前作「デッド寿司」にくらべると、印象が薄く荒っぽい。何より性同一性障害を軽視しているような部分が、かなりの減点。デバルザが離れたら、タケシの変身は終わらないとおかしいし、冒頭のシーンとも一切つながらない。女性たちが乳からレーザーを出す攻撃が一次的に無くなるなど構造上おかしいところもあり、何でもありの井口作品とはいえ、しっかりとしてほしかった。特撮作品に造詣が深い人は燃え上がるし、グッとくる要素やセリフがあるのかもしれないが、手前のような人間にはピンとこなかっただけの話かもしれない。劇中の音楽は、原作者であり物語の真の妄想者である大槻ケンヂが携わっていることもあって、世界観にとてもマッチしていると思うし、斉藤工演じるコージの強烈なバカキャラは笑った。これまでの作品に比べて豪華キャストを揃えただけに残念。